SABCS 3日目


 学会3日目で佳境に入る。霧にけぶる Henry B. Gonzalez Convention Center。気温はむしろこれまでより高い。今日はコートが要らなかった。

 メイン会場。5,000人くらいは入れそう。スライドと発表者の顔が大写し。

 William L. McGuire Memorial Lecture。この学会はテキサス大学サンアントニオ校の腫瘍学のMcGuire教授によってはじめられた。乳がんのことを基礎から臨床まで、ひとつの会場でみんなで勉強しようという精神のもと。メイン会場はひとつでずっとやっているときく。彼は1992年にスキューバ・ダイビングの事故で亡くなるが、彼を記念して彼を慕う人たちの手によって毎年サンアントニオの地でこの乳がんシンポジウムは続けられ、年々大きくなったというわけだ。毎年、彼を偲ぶMemorial Lectureが行われる。Translational researchという今では皆が使う言葉だが、McGuire教授は当時からその重要性をずっと強調しておられたという。きっと親分肌の人だったんだろうな。

 昼食時にはこれも毎年恒例の Case discussion。Medical Oncologist(USAとEU,今回はUK), Surgical Oncologist, Radiation Oncologist, Patient Adovocateなどがひな壇に座ったところで、会場の聴衆から相談症例が提示される。打ち合わせなし(だと思う)のぶっつけ本番で、いわゆるエビデンス・グレーゾーンの症例が次々と紹介され(参加者の口頭のみで)、専門家がエビデンス+αの、そこが訊きたいというところを的確に答えていく。丁々発止のやりとりが面白く、また、一言も聴きもらすまいと思って一生懸命聴くためか、このセッションだけは眠くならない。臨床家にはたまらない、まさにノンストップの1時間強だ。今年は10例ぐらいの症例が提示され、センチネルあり、遺伝性乳がんあり、Triple Negativeあり、Neo Hormoneあり、のバラエティーに富んだ、そして示唆に富むセッションになった。昔は、モニカ・モローが回答者の中にいて、例によって迫力があった。Over 10 nodesでいろいろやって5年たって今のところ再発はないんだけど今後は?、と訊かれて、"Don't stop the tamoxifen!, next" と答えたのが、何だかカッコよかったのを憶えている。
 私たちの医局でも毎週1回、術前カンファレンスの時に、相談症例ということで同じような、ちょっとtough caseの対応をみんなで話し合うようにしている。かくありたいと思うところなのだ。