昭和の研修医と平成の研修医

「3年で辞めた若者はどこへ行ったのか―アウトサイダーの時代」を読む。同じ作者の「若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来」の続編風。昭和的価値観から平成的価値観への変化を、著者は前作よりもより肯定的に書いている。
 医者の世界も同じ!、と思った。2004年から始まった新臨床研修制度が変化に拍車をかけていると思われる。医者は元々医師免許をもらったときから独立稼業なので、一般のサラリーマンとは違うのだが、かつて多くの医師は大学医局に入局し、その中で育てられ、その人事の中で(教授を目指したり、関連病院に勤めたりしながら)定年を迎えたり、開業したりしていた。しかし、最近は大学医局に属さず、自分で卒後研修病院を選び、その後も自分の選択で病院を変えながら、キャリアを築いていく人が増えてきたように思う(その影響で地方の病院から医師が減り、「医療崩壊」の一因となっているという分析もある)。
 私は、「平成の外科医」を自認しているが、「昭和の研修医」であったため昭和的価値観にどっぷりつかった教育をうけてきた。現在は医局を離れ、医局人事とは関係のない病院に勤務しているので、生き方としては平成的なのかもしれないが。
 どちらがよいのかは正直言ってわからない。時代の要請や労働に対する意識の変化などがあるのだと思う。また、将来、揺り戻しが来るかもしれない。「ゆとり教育」が非難を浴びているように。
 結局、優秀な人は、どんな制度でも優秀になっていくだろう(上位10%ぐらい?)。「ちょい」の人を「一人前」にするのが制度の力ということになろうか。多くの人がhappyになれる制度を作っていく必要がある。むろん、社会のコンセンサスを得ながら。

若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来 (光文社新書)

若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来 (光文社新書)